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「安東総理、あれが東日本断層です」
公安警察所属、秘密結社≪天鴉≫の実質的リーダーである神沢優は無念そうに切り裂かれた大地を見つめた。
長い黒髪にいつもの紅色のサイバーグラスをしていたが、口元は厳しく引き締められていた。
自衛隊の汎用偵察ヘリ『OH-1改ハウンド』、通称≪シャドウスキル≫の後部座席には安東要総理が搭乗していた。
「マグニチュード10.0、地球上で起こりうる最大の地震が発生しました。天山原発跡地は地面が陥没して巨大なクレーターができています。広島に投下された原発の六十発分の核燃料デブリで地下核実験をしてしまったようなものですからね。まだ、詳細な報告は上がっていませんが、東北地方の残り三ヶ所の原発はおそらく、全てメルトスル―、崩壊状態にあります。青森の霧島、美津島原発、柏崎の鳥居原発、東海の浜川原発は奇跡的に助かっています」
神沢優はできるだけ冷静に言葉をつむいだ。
「間に合わなかったか……」
三十五歳の若き総理、安東要は自分の不甲斐なさに唇をかみしめて両拳を強く握った。
短いがゆるくウェーブのかかった髪型、切れ長の目も光を失い、深い絶望に沈んでいた。
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