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お店の入口は自動ドアでなくて、重い木の扉を開けると、鈴の音がカランコロンと響いた。
「おかえりなさいませ、ご主人様」
≪冥途≫の対応はいたって普通で、黒と白の清楚なメイド服姿がよく似合う女の子が多数いた。
帰り際というか、出発の際、「冥途の土産にお菓子はいかがですか?」と勧めてくるぐらいが「らしい」といえばらしかったが、それ以外は何のひねりもなかった。
(晴明さま、たまにここに来られるんですか?)
興味本位で訊いてみた。
(たまにな。≪冥途カフェ≫という店名がわしの心を癒すのじゃ)
(そういうもんですかね)
(おぬしも年を取ったらわかる)
そういえば、お客の中にはかなり年配の老人もチラホラいて、≪冥途≫の名札の下には「介護福祉士資格取得済☆」という表示が見えた。
60歳以上半額!
団体様の送迎介護タクシー無料!
早朝五時から営業中!とかの張り紙が壁に踊っている。
年金暮らしの高齢者が早朝から日中のいいお客さんなのかなと思われる。
抹茶カフェオレとか、葛餅とか、水ようかんとか、和菓子がメニューが妙に充実してるのはそのせいなのかなと思った。全体的に昭和モダンな雰囲気で懐かしい感じを演出していた。
高齢化社会の現実を垣間見た気がした。
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