冥途カフェ

5/7
前へ
/236ページ
次へ
 ふと視線を向けた先の月読波奈は、左の鼻の穴からストローでフルーツ牛乳を吸い込んで、右の鼻の穴から垂れ流すという芸というか、奇行に夢中になっていた。  しかも、左の鼻の下の空のコップに見事にフルーツ牛乳を溜めていた。  一滴もこぼしていない。  懐かしい。  子供の頃によくやったよ。  いや、そうじゃない。   「わだじば、みえてますよ」   フルーツ牛乳のせいか、少し濁音気味だが、どうやら今まで見えていたらしい。  早く言って欲しかった。  というか、もうそれやめて欲しいのだが。  「なかなかナイスなおじさまよ。さすがに≪超ヒモ理論≫を極めただけあるわ」  神沢優はさらっと言ったが、≪超ヒモ理論≫がそんなに有名とは思えない。  宇宙論の≪超ヒモ理論≫と勘違いしてないかな?   「安倍晴明といえば、宮中の女官とか皇女様にまでモテモテで、≪超ヒモ理論≫といえば最近でも100万部の大ヒット恋愛本の古典よ。最近でも文献研究が活発で、ノーベル文学賞の候補にも何度も挙がっているくらいなのよ。知らないの? 知らないか」  決めつけないでください。  しかし、この世界の歴史ではそうなってるんだ。  まさか清明さまは、この世界(パラレルワールド)の人間なのか?
/236ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加