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……悪いことというのは、何故立て続けに起こるのだろう。
清掃中、突然激しい腹痛に襲われた悠は、余りの痛みに動けなくなり、救急搬送される途中で意識を失った。
そうして搬送先の病院で目を覚ましたとき、既に悠の体内から胎児は居なくなっていた。
一体何が起きたのかわからず呆然とする悠に、医師は淡々と告げた。
「残念ながら、進行流産で胎児は助かりませんでした。検査の結果、体質的に不育症の傾向があるかも知れません。出産が不可能ということはないですが、一般的なΩ男性と比較すると、胎児が発育しにくい確率が高いと考えてください」
シンコウリュウザンってなんだよ。
フイクショウって?
……まともに子供が産めないΩなんて、何の価値があるって言うんだ。
知らない間に悠の中から居なくなっていた胎児の顔も見られず、今後の未来までも断たれるような医師の言葉に、最早涙すら出なかった。
結果的に唯一の本郷との繋がりだった胎児も失い、完全に道を見失った悠は、地方へ移り住み、そこからはただひたすら暗い坂道を転がるように、AV業界へと堕ちていった。
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