第二話

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「ごっ……五千……! 五千が出ました……! 五千から上は、いらっしゃいますか!?」  オークションを仕切っているマイクの男も思わず言い淀む金額に、先ほど悠を競り落とした気になっていた男は悔しげに呻きながらも、渋々腰を下ろして引き下がった。  最早悠には、飛び交う金額がとっくに理解の範疇を超えていていまいちピンと来ない。ただ、明らかに悠には見合わない、とんでもない額が提示されたということだけはわかった。 「いらっしゃいませんね! それでは……」  司会の男に誘導されるよりも先に、五千万もの高額を提示した客の男が、片手に大きなアタッシュケースを提げ、長い脚でゆっくりとステージの方へやってくる。他の客と同様、顔は仮面で隠されているのに、ただ歩いているだけでも全身にただならぬオーラを纏ったその姿に、店内に居る者は皆息を呑んで見守ることしか出来ないようだった。  そんな周囲の視線など全く気にした風もなく、男は躊躇いなくステージに上がるなり、司会の男の前にアタッシュケースを下ろした。 「キャッシュで五千万。確認して貰って構わないけど、その前に先ずはこの下品な玩具、早く抜いて貰えないかな。こういうのは趣味じゃないんだ」 「は、はい……!」     
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