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だが、感染症の結果が陽性かも知れないことを考えると、やはり出てきて良かったのかも知れないとも思う。ただそうなったとき、いよいよ悠はこの先どうやって生きていけば良いのだろうと眉を顰めたところで、枕元に置いていたバッグの中からスマホの通知音が聞こえた。
抑制剤が効いているとはいえ、完全に火照りは消えていない身体を気怠げに捩って、悠は点滴の繋がっていない方の手でバッグからスマホを取り出した。
『立花:ゴメン、御影。先に謝っとく』
立花から、謎のメッセージが届いている。
突然の謝罪の理由が全くわからず、悠は益々眉間の皺を深めた。
『御影:ゴメンって、なにが』
『立花:その内わかると思う。とにかくゴメン』
『御影:意味わかんねぇんだけど』
悠が返したメッセージに、既読マークは付いたものの、それっきり立花から返事が返ってくることはなかった。
一体何なんだよ、と溜息を吐いて、悠はスマホをバッグに押し込む。
発情期で怠い上に、これ以上あれこれ考えていると、気分が沈んでいく一方な気がした。
いくら月村が理解のある医師だとしても、さすがに診察室で自慰をするわけにもいかず、悠はもう何も考えたくないと、強く拳を握り締めたまま無理矢理目を閉じた。
身体の芯で燻っている、Ω特有の浅ましい炎によって、胸の奥にまたドロリと膿が溜まっていくような気がした。
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