第三話

15/36
5069人が本棚に入れています
本棚に追加
/273ページ
 言い終わる前に、本郷の手が悠の細い手首を掴んでグイ、と強く引っ張った。そのまま強引にベッドから引き摺り出され、扉の向こうへ連れて来られた悠は、目の前に広がる光景に目を瞠った。  先ず目に留まったのは、一体何十畳あるのだろうかと思うほど広いリビングダイニングの中央に置かれた、立派なグランドピアノ。  そのピアノを境に、寝室側には高そうなソファと、巨大なテレビが置かれていて、反対側のダイニングスペースには立派なアイランドキッチンが備え付けられていた。  目の前の壁一面をカーテンが覆っているが、もしかしてカーテンの向こう側は全部窓なんだろうか。  余りの広さと豪華さに軽い眩暈を覚える悠の手を引っ張って、本郷はそのままピカピカのキッチンへ向かう。 「ある程度の食材は冷蔵庫に入ってるはずだけど、何か作れる?」  漸く悠の手を解放して、本郷は悠の家にあるものの倍はありそうな冷蔵庫の扉を開けた。背後からそっとその中を覗き込んでみると、そこには『ある程度』どころか、数週間は困らないのではと思えるほど、様々な食材がビッシリ入っていた。ついでに見せて貰った野菜室や冷凍庫も同様で、チルド室には悠がテレビや雑誌でしか見たことがない最高級の肉も入っている。 「……どこのレストランだよ……」 「俺は飲み物以外は全く自分で触らないから、食材の調達なんかは基本的にシェフに任せてあるんだ」     
/273ページ

最初のコメントを投稿しよう!