第四話

1/29
6930人が本棚に入れています
本棚に追加
/274ページ

第四話

  ◆◆◆◆◆  生まれたときから、本郷の家には毎日音楽が溢れていた。  父はバイオリニスト、母はピアニスト。共にαの両親は、本郷が生まれた頃には既に二人とも、世界中を飛び回るほど有名なミュージシャンだった。  父と母が各々練習をしている日もあれば、その日の気分で二人でセッションをしたり、週末などは両親の音楽仲間が本郷家に集ってちょっとした演奏会が開かれる。  そうして常に音楽を楽しんでいる両親の姿を見るのが、本郷はとても好きだった。中でも特に、母が奏でる繊細なピアノの音が本郷は大好きで、人生で初めて親に強請った玩具はトイピアノだった。母の演奏に合わせて、小さなトイピアノを毎日弾いていたのを覚えている。  家にはバイオリンやピアノ以外にも、音楽好きな両親が趣味で嗜んでいるドラムやギターにサックスなどの様々な楽器もあって、本郷は一通り触らせて貰ったが、やはり一番自分が極めたいと思ったのは、母と同じピアノだった。     
/274ページ

最初のコメントを投稿しよう!