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同情ではない。
一緒になって悲しむ訳でもない。
琴子の意図がわからなかった。
「もう1週間も経ってるんだ。気持ちの整理はついてるよ」
笑みを浮かべると、琴子は手を止めて顔を上げた。
真っ直ぐな視線。
まるで見透かしているような視線に俺は怯んだ。
「お祖母様と過ごしてきた14年間を、1週間で整理出来る筈ないでしょう」
笑うことが出来なかった。
表情が固まるのが自分でもわかる。
喉がひくつき、奥歯を噛みしめる。
「……」
「嫌だって……言えばいいんじゃないの」
「……何に」
「いなくなったら嫌だって」
「そんなの……誰に言うんだよ……」
言いたい相手はもういないのに。
「自分自身に」
訳がわからなくて眉を寄せる。
「そうすれば、今、私は聞くことが出来る。私じゃなくてもいい、悠一だっていいの。気持ちを押し込んだまま1人で抱え込むのはしんどいわ」
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