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琴子は日誌に目を落とし、再び手を動かし始めた。
「陽人は気を遣わなくていい人にまで気を遣いすぎなのよ」
そう言われて気付く。
両親の前でも、俺は泣く姿を見せなかった。
悲しんでいる両親を支えたいと思ったから。
悠一も琴子も花音も奈津も「大丈夫?」とは聞かなかった。
聞けば「大丈夫だよ」と笑って答えるしかない。
本当は大丈夫なんかじゃないのに。
きっとそれが分かっていたから。
悠一と奈津は気持ちを隠すのが下手だから俺を心配しているのが丸わかりで。
花音にいたっては余計な事を言わないようにと黙っている様子が逆に不自然。
それはありがたいと思ったから安心させるように笑って見せていたけれど。
琴子は普段と変わった様子はなかったが、そんな俺を見て声を掛けずにはいられなかったんだろう。
ただ吐き出せばいいんだと。
辛いと言える場所は近くにあるのだと。
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