片恋煩い

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有村の勧めで入ったのはやきとり屋。 時間が早いせいか店内には1組しか客がいなかった。 調理場から漂ってくる肉の焼ける良い匂いに鼻をひくつかせる。 「こういう店とか来るんだ」 「先生に教えてもらったの。美味しいよ」 向かいに座った有村がメニュー表を見てから俺に視線を移した。 「不動君、お酒は?」 「いや、飲まない。そこまで強くねぇし」 「そうなんだ。ちょっと意外」 「有村はー……まだ二十歳になってねぇのか」 「うん。でも間違えて飲んだ時に眠くなったから私も弱いと思う」 そして頼んだのはウーロン茶とグレープフルーツジュース。 健全だ。 テーブルの上にはサラダや串の盛り合わせ、あとは つまめる物を数皿。 グラスを合わせて箸を進めながら近況を報告する。 有村とは頻繁に会っている訳ではないが、こうして 2人で会う事は今はもう珍しくない。 俺に彼女がいた時期は有村の方が遠慮していたけれど。 “先生に悪いし、って俺が断るのと一緒だぞ” と言うと笑って納得していた。
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