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「……椎名さん……」
露骨に顔をしかめる有村。
その表情からこいつが告白してきた奴かとすぐに察する。
「奇遇だね、今帰り?」
「えーと……はい」
見た目は爽やかそうなのだが。
と言うか、有村と話しているのに俺をちらちら見るな。
「彼氏?」
「友達です」
「ふぅん?」
「……」
見定めるような視線が気に食わねぇ。
俺と比べて優位に立ちたいってか。
「もう帰るなら用事は済んだって事だよね」
「え?」
「今からでもどう?どこか飲みに行かない?」
「いえ、帰ります」
「奢るからさ」
「結構です」
これだけ態度に出しているのに気付く様子もない。
素なのか気付かないフリをしているのか判断しかねる。
有村も変な男に目をつけられたもんだ。
引き下がらない男を見ていると段々苛ついてきた。
あぁもう面倒くせぇな。
「わっ!?」
有村の手首を掴んで引き寄せる。
「こいつの彼氏、結構いい男なんでさっさと諦めた方がいいっすよ」
「ふ、不動く……!」
「ま、別れてもまだ俺がいますし?あんたよりは可能性あるんじゃないっすか?」
「はぁ!?」
顔が崩れてるっつの。
振られた女の尻をいつまでも追っかけてんじゃねぇ。
「行くぞ有村」
「う、うん」
すんなりとついてきてくれた事に安心した。
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