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「お久し振りです」
俺が言うと、はっとした表情の後に昔と変わらぬ笑みを見せた。
「久し振り、元気そうだな」
「先生、今日は打ち合わせじゃなかったんですか?と言うかどうしてこんなところに?」
「店長に急用が出来て別日になったんだよ。だからそのまま帰って来た。で、車置いてコンビニに買い物」
こうして付き合っている2人を見るのは初めてだか、有村の口調は高校生の頃と全く変わっていない。
俺がいる手前……という訳でもなさそうだ。
彼氏に敬語使ってんのかよ。
らしいと言えばらしいけど。
「飯に行くって不動とだったのか」
「あ、そうなんです。それで……」
有村が俺といる経緯を説明する。
さっきの奴の事は聞いていたのだろう。
段々と顔つきが険しくなった。
「それを不動君が助けてくれて、ここまで送ってくれました」
先生が俺を見てほっとしたように笑う。
「助かった。ありがとな」
「いえ」
先生も心配してたんだな。
まぁあの男じゃ心配するなって方が無理か。
「んじゃ、俺はこれで帰るわ」
信号も青に変わったし、俺の役目は終わりだ。
紙袋を渡していると有村が何か思い出したのか、ばっと顔を上げる。
「あ!ごめん不動君!ちょっと待ってて!」
「え?」
「学内公演のチケット、部屋にあるから取ってくるね」
また今度でもー……と言い掛けたが、有村も忙しくなるだろうし、今渡された方がお互い楽だろう。
「わかった」
「すぐに戻るから!」
そう言って有村は俺達に背中を向けて駈けていった。
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