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「っと、すんません」
「!」
その声と共に、気持ちの悪い感触が消える。
心底ほっとしたけれど、身体が扉に押し付けられて更に窮屈になった。
「……悪い、次の駅まで我慢出来るか」
私にだけ聞こえるように囁かれた男の人の声。
恐る恐る、ほんの少しだけ振り返る。
スーツ姿の若い男の人が目に入った。
「(……あ……)」
多分痴漢に気付いて私の真後ろに割って入ってくれたのだろう。
そうじゃなきゃ、こんなキツそうな体勢でわざわざ立っていないはず。
半泣き状態で声も出せなかったけれど、こくこくと何度も頷く。
目が合うと、その男性は安心させるように小さく笑みを見せた。
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