2度目の一目惚れ

3/89
前へ
/313ページ
次へ
「っと、すんません」 「!」 その声と共に、気持ちの悪い感触が消える。 心底ほっとしたけれど、身体が扉に押し付けられて更に窮屈になった。 「……悪い、次の駅まで我慢出来るか」 私にだけ聞こえるように囁かれた男の人の声。 恐る恐る、ほんの少しだけ振り返る。 スーツ姿の若い男の人が目に入った。 「(……あ……)」 多分痴漢に気付いて私の真後ろに割って入ってくれたのだろう。 そうじゃなきゃ、こんなキツそうな体勢でわざわざ立っていないはず。 半泣き状態で声も出せなかったけれど、こくこくと何度も頷く。 目が合うと、その男性は安心させるように小さく笑みを見せた。
/313ページ

最初のコメントを投稿しよう!

121人が本棚に入れています
本棚に追加