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次は降りる駅ではなかったけれど、そのまま乗っているのが怖くて人混みに流されるように降りた。
真後ろに立ってくれていた男性も同じように電車から降りる。
「……っ、あのっ……!」
そのまま立ち去ってしまいそうな男性の腕を慌てて掴む。
笑っていないと目つきが鋭くて思わずたじろいだ。
すぐに手を離して頭を下げる。
「あ、ありがとうございました……!」
「あー……」
その人は少し困った表情をして、申し訳なさそうに頭を掻いた。
「俺も確実に見てたわけじゃなかったからあんな風にしか出来なかったけど……」
「いえ、本当に助かりました。どうしていいかわからなかったので」
そう伝えると、男性はほっとしたように笑う。
「なら良かった。それじゃあ」
改札口に向かう男性に、もう一度深々と頭を下げた。
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