2度目の一目惚れ

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「ちょっと肌寒いね」 「ねー、すぐに冬になっちゃうよ」 外に出ると、金木犀のどこか懐かしい匂いが鼻を掠めた。 クリスマス近くに定期演奏会があるから、ここからまた少しずつ忙しくなって。 この季節が一番好きなのに、あっという間に過ぎ去ってしまう。 「あれ、今日はこっち?」 泉の帰る方向、逆だと思うんだけど。 「図書館に寄って行くの」 「そっか。じゃあ途中まで」 歩きながら話をしていると、10メートルくらい先にスーツ姿の男性の後ろ姿が視界に入る。 就職活動中の4年生か。 もう数ヶ月も経てば自分も同じ立場になるのかと思うと、胃が痛む思いだ。
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