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「……あ」
泉の小さく呟く声。
どうしたんだろうと視線を追うと、先程私が見ていた男性を泉も見つめていた。
「不動さーん!」
高い声で呼び掛ながら駆け寄ると、スーツ姿の男性が振り返る。
その顔を見て息が止まった。
「仕事ですか?今日はどうして大学に?」
「吉田達に飲みに誘われたんだよ。稼いでんだからおごれってさ」
「え、じゃあ私も参加していいですか?今日空いてるので」
「でも泉はー……」
泉の後ろにいた私に視線を移した不動さんと呼ばれた男性も驚いた表情をする。
「(気付いて……くれた)」
ずっと会いたいなと思っていた人。
記憶に残っていてくれた事が、なんだか嬉しかった。
ほんの少し、鼓動が速まる。
「あの……先週はどうもありがとうございました」
ぺこりと頭を下げる。
「あぁ。この大学だったのか」
私と不動さんのやり取りを見ていた泉が首を傾げた。
「?律、知ってるの?」
「えーっと……うん。後で詳しく話すよ」
というか、すぐにでも泉に問い詰めたかった。
フルネームや年齢や関係性などすべて。
「俺はこのままサークル棟に向かうけど、泉はどうすんだ?」
「後で合流してもいいですか?図書館に寄ってから
行くので」
「おー、わかった」
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