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泉に先週の出来事を話す。
痴漢に遭い、助けて貰ったこと。
それからなんとなく気になっていたこと。
「それって一目惚れだったり?」
泉が私を見てにまにまと笑う。
「なっ……!」
声を荒げてしまいそうになり、慌ててトーンを落とす。
「助けてくれた人だから知りたかっただけ」
「ふぅん?」
「……何、その目」
「だって律の恋愛話とか聞いた事がなかったんだもん。友達の恋は応援したいじゃない?」
恋なんて高校生の時以来していない。
その時も告白して振られてしまったから、彼氏いない歴=年齢だ。
また好きな人が出来たらいいなとは思っていたけれど。
「不動さん、イイ人だよ。見た目と違って優しいし面倒見がいいし」
「それ、褒めてる?」
「もちろん」
「じゃあどうして彼女がいないの?」
「4年の時はいたよ?夏ぐらいに別れたみたいだけど、同じサークルの女の先輩。綺麗系の」
彼女がいた事と綺麗系という言葉に、少なからずダメージを受ける。
今24歳ならこれまで彼女がいてもおかしくない年齢だ。
そこは仕方がない。
けれど綺麗系って……。
「お、へこんでるって事はやっぱ気になってるんじゃん」
「……好みが綺麗系ならどのみち無理だよ」
綺麗とか可愛いとか、私には無縁の言葉。
タフだねとか強いねと言われる事はあるけれど。
「別に気にしなくていいんじゃない?律のたくましくてバカ正直な所、私は好き」
「褒めるかけなすかどっちかにして!」
頭を抱える私を見て、泉はからからと笑った。
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