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「じゃあ来週は服も見に行こうよ。恋をすると新しい服が欲しくなるでしょ?」
私に反論する隙も与えずに、泉はそう言って図書館に入ってしまった。
そっと息を吐いてバッグを持ち直す。
サークル棟に近付くにつれて、色んな音が聞こえてきた。
楽器の音だったり発声している声だったり、大音量の音楽だったり。
私の所属している吹奏楽団の練習部屋は、一番奥の第3サークル棟。
いつもなら素通りしているけれど、なんとなく立ち止まって見上げたのは第1サークル棟の建物。
「(この2階……だっけ)」
音楽研究会の部屋は一番端だったはず。
あそこにいるのかと思うと、なんだかそわそわしてしまう。
飲みに行くと行っていたから、もしかしたら外に出てくるかもしれない。
そう思って辺りを見渡していると。
「あれ、りっちゃんどしたの?こんな所で立ち止まって」
同じ楽団の先輩に声を掛けられ、慌てて背筋を伸ばした。
「あ、いや、何でもないです」
「そう?じゃあ早く行こ、新しい楽譜が来たって」
「ホントですか!楽しみです!」
後ろ髪を引かれる思いもあったが、今は練習が優先。
初見の合奏、出来るだけいいものにしたいし。
もう一度だけ見上げてから、私はその場を離れた。
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