秘めた想い

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「ねぇ、そんなにやってて陽人は疲れたりしないの?」 中2の時、奈津(なつ)にそう問われた事がある。 「無理だって思う前には頼るようにしてるから大丈夫だよ」 俺だって万能ではない。 その事は自分が一番よくわかっている。 「じゃあさ、余裕あるなら今年の文化祭は皆でバンド組んで出ようよ」 「え、あれ本気だったの?」 「あったり前!花音のギターも聴けるようになってきたし、悠一だってまんざらじゃない顔してたじゃん。楽器が出来ない私はボーカルやればいいし」 そんな簡単に言われても。 「琴子はなんだかんだで付き合ってくれるしね」 「まぁ……考えておく」 正直この時は乗り気ではなかった。 全員部活に属しているのに練習する時間が取れるのだろうか。 いや、それ以上に人様に聴かせられるレベルになれるのかが一番の不安材料だ。 「今から楽しみ~」 勢いで言っただけだと思っていたのに。 負けず嫌いというか見栄っ張りというか。 当日までに皆最低限のレベルまで仕上げてくるのだから。
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