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「何だかあっという間だった気がするわ」
夕焼け空を見ながら、琴子が感慨深そうに言う。
「結構楽しかったからじゃない?」
「そうね、バンドもやれたし充実してた」
「有村さんが入ってくれてから花音が俄然やる気出してたしね」
有村さんを連れて来た時は心配したものだ。
明らかに無理矢理引っ張ってきた感じだったから。
「俺らの付き合いってそこそこ長いから、その中に入り難いと思ったけど」
「似てる所があるのよ」
くすりと楽しそうに笑う。
「一度決めたら何が何でもやり遂げたりとか」
確かにその部分は俺達に似ているのかもしれない。
まぁストイックさは一際飛び抜けていると思う。
そして本人の自覚がまるでない所が恐ろしい。
「奈津の所も今日が卒業式だって」
「そっか」
中学の卒業式以来、奈津とは疎遠になってしまっていた。
琴子と花音から近況を知る位。
悠一も連絡は取り合っていると聞く。
俺だけが友人という関係性を継続出来ていないのだ。
それは俺と奈津の間に出来たほんの僅かな溝のせい。
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