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それは俺と琴子が日直で、授業後に居残っていた時の事だった。
琴子が学級日誌を書き、向かいに座った俺は口を挟むだけ。
と言っても、授業内容もしっかりと記憶している琴子に何か言う必要もなく。
俺は頬杖をついて窓の外の景色をぼんやりと眺めていた。
「あとは今日1日の感想の所だけよ。何かある?」
「え?あぁ、えっとー……もうすぐ期末が近いので暑さにめげずに頑張ります、とかでいいんじゃない?」
琴子が俺の顔をじっと見つめる。
何か変な事でも言っただろうかと首を捻った。
「……無理して笑うことないわよ」
すぐに祖母の事を言っているのだと理解した。
気遣われている。
ただそう思った。
だからいつも通り笑って「そんな事ないよ」と言って見せるつもりだった。
けれど琴子はもうこちらを見ていなかったし、日誌に目を落として俺の言葉をそのまま書き込んでいた。
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