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番外編 ろくでなしの君と見るスターマイン
「……お前、ふざけてんのか」
透が解いていた数学の課題の問題集を覗き込んだ喜多川が、頬杖をついたまま低い声を零した。
「えっ、何が……?」
場所は喜多川の自宅マンション。
リビングのテーブルで、透は小一時間ほど前から夏休みの課題と向き合っている。
と言っても、課題を広げているのは透一人だけ。
授業をまともに聞いていなくても成績の良い喜多川は、「課題なんか三日ありゃ充分だろ」と既に全ての課題を片付けてしまっていた。
一方の透は、八月もそろそろ半ばになろうというのに、まだ半分も終えていない。
別に課題をさぼっていたわけでは、断じてない。
期末テストも散々な結果だった透は、単に行き詰ってなかなか進んでいないだけなのだ。
そこで優秀な喜多川『先生』に助けを求めてやって来たのだが、至って真面目に取り組んでいたつもりの透に、喜多川は盛大な溜息を零した。
「今解いてるとこまでで、正解一問しかねぇぞ」
「!?」
既に十問目まで解答を書き込んだ問題集を見詰めて、愕然とする。
「一問だけ合ってんのも、途中の計算式意味わかんねぇから多分まぐれだな」
「う、うそ……」
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