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「嘘だと思いてぇのはこっちだっつの。さっき公式教えただろーが。それ当てはめるだけなのに、どうやったらこんだけ間違えられんだよ」
「ちゃんと当てはめてるつもりだったんだけど……?」
「問一と問二は、二乗抜け。問三から問六までは計算ミス。問八、√がねぇ。問九と問十はそもそも公式ぶっ飛んでる。奇跡的に合ってんのは問七だけだな」
「ええ~……」
折角少し進んだと思ったのに……。
ポッキリと心が折られて、透は力なく課題の上に突っ伏した。
「なんでこんなに出来ないんだろう……。喜多川の頭、少しでいいから分けて欲しい」
「期末で五教科中、四教科補習だったお前は、少しどころじゃ足りねぇだろ」
「うっ……それホントにショックだったんだから言わないでよ」
「しかもその内二教科は追試の追試だったな。そんなモン、初めて聞いた」
「どーせ俺一人でした!」
ガバッと顔を起こして自棄気味に反論すると、喜多川はもう一度溜息を吐いて立ち上がった。
そのままキッチンに向かい、冷蔵庫から缶コーヒーを二本取って戻ってくる。一本はブラック、もう一本はミルクが多めの微糖だ。微糖の方を、透に向かって無造作に放る。
喜多川がそうやってさり気なく透に飲み物を渡してくれることにも最近は慣れてきたので、それを咄嗟にキャッチするくらいは、透にも出来るようになっていた。
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