番外編 ろくでなしの君と見るスターマイン

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「その集中力じゃ、このままやったってどーせ無駄だ。一回切り替えて公式から覚え直せ」 「……ありがと」  喜多川の何気ない気遣いもそうだけれど、呆れながらも透を突き離さない喜多川の優しさに、透は口許が弛みそうになるのをどうにか堪えた。  学校では寝てばかりで、生徒にも教師にも不遜な態度を崩さない喜多川のこんな一面を知っている人間は、一体どのくらい居るのだろう。  高校二年になって、喜多川と同じクラスになったばかりの頃は、まさか彼の自宅にまで通うような仲になるなんて、思ってもみなかった。関わりを持つことすらないだろうと思っていたのに。    初めて喜多川のマンションを訪れたのは、透にとって人生で初めてのキスを、喜多川と交わした日のことだった。  招いてくれたのは、喜多川本人ではない。彼の異父兄である、二宮だ。  二宮とは、白石の自宅から助けてもらったときに、今後の為にと連絡先を交換していたのだが、喜多川と屋上で丸一時間授業をサボった透の元に、突然二宮からメールが来た。 『夕方五時頃、ここに来てくれる? 部屋番号は「1005」。エントランスで番号呼び出してもらったら、多分すぐにわかると思う』     
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