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橋口いずみと同様、喜多川は父親のことも『親』だとは思っていない様子だったので、透も深くは聞いていない。喜多川にとっては関心の無いことなのだろうと思ったし、いずれ喜多川が話そうと思うときがくるなら、それを待つのが一番だと思ったから。
喜多川の自宅へ来ても、二人で特に何をするということも無い。
時々は今日のように勉強を教わったりするけれど、喜多川はマイペースに昼寝をすることもあれば、意外なことに複数の新聞を隅々まで読みふけっていたり、ノートパソコンの画面を延々と眺めていたりする。昼寝以外は、きっと二宮の仕事に関係しているのだろう。
それに、喜多川は料理もそれなりに得意なようで、食材を買いに出るのが面倒なとき以外は、大抵自炊しているということにも驚いた。透が来るときは、いつも何かしら食事を用意してくれる。最初は手伝いを申し出たのだが、「包丁の持ち方ヤバすぎだろ」とキッチンから追い出され、以来透はすっかりもてなされるばかりになってしまっていた。
家でもダラダラと過ごしているのだろうと思っていただけに、真剣な顔で情報収集していたり、キッチンで料理をしている喜多川の姿は新鮮で、それをただずっと眺めている時間も、透はまた一歩喜多川に近付けている気がして嬉しかった。
ただ、その一方でまだあやふやな部分もある。
翌日学校が休みの日、透は喜多川の自宅に泊めてもらうことも何度かあった。
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