番外編 ろくでなしの君と見るスターマイン

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 喜多川は夜なかなか眠れないのだという二宮の言葉が、どうしても気になっていたからだ。  二宮が喜多川の自宅の住所を教えてくれたのも、きっとそれを案じてのことだったのだろうと思う。透の親も、白石の自宅に泊めてもらったという嘘の土台があったお陰で、喜多川の自宅に度々泊まるようになった透を特に咎めることもなかった。  夜を共に過ごすようになって知ったけれど、喜多川は本当にいつも夜遅くまで起きている。  もうそろそろ両手で足りなくなるくらい、透は喜多川の自宅に泊まっているが、喜多川が眠るまで起きていられたことは、まだ一度もない。  頑張って深夜二時過ぎまで起きていたときも、結局は透の方が先に限界を迎えて寝落ちてしまった。  しかも、朝起きると喜多川は、いつもソファに長身を横たえて寝ているのだ。長い脚はソファから大きくはみ出してしまっていて、寝辛そうなことこの上ない。毎回透だけが、ベッドでぐっすり眠って朝を迎えるばかり。  膝を貸すなんて言っておきながら、喜多川の夜型生活を一向に改善出来ていないのは、正直悔しかった。  それに何よりもどかしいのは、こうして自宅を訪れる仲になったのに、屋上へ続く踊り場で交わして以来、喜多川とはキスの一つもしていないことだ。     
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