番外編 ろくでなしの君と見るスターマイン

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 プライベートな空間にまで踏み込ませてもらって、確実に二人の距離は縮まっているはずなのに、喜多川の気持ちがいまいち曖昧なままで、透にはよくわからなかった。  嫌われているならそもそも自宅になんて上げてもらえないだろうけれど、改めて好きだと言われたこともない。  透の「一緒に寝たい」という気持ちは、あくまでも一方通行なのだろうか。  喜多川にとって、自分はどういう存在なのだろう。  透では、喜多川に安眠を与えることは出来ないんだろうか。  喜多川が手渡してくれた甘めの缶コーヒーに口を付けながら、チラリと視線を上げる。テーブルを挟んで向かいに座った喜多川が広げている新聞には、昨夜開催された都内の花火大会の写真が掲載されていた。  そういえば白石の手帳にも、毎週のようにあちこちで開催される花火大会の予定が書き込まれていたことを思い出す。 「もうすぐ、S川の花火大会だっけ」  S川の河川敷で開催される花火大会は、毎年全国中継される規模の一大イベントだ。透の自宅からでも、辛うじて家々の隙間からほんの少しだけ花火の半円が見える。 「……喜多川って、花火とか見に行ったりする?」     
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