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率先してイベントごとに参加するタイプには見えないが、喜多川なら、浴衣で着飾って張り切る女子たちからしょっちゅう誘いを受けていそうだ。もしも透が誘ったら、喜多川は一緒に花火を見てくれるだろうか、なんて淡い期待を抱く。
けれど面倒臭がりでマイペースな喜多川は、「は?」とさも煩わしそうに紙面から顔を上げた。
「わざわざ人混みン中に出向いて何が楽しいんだよ。別に花火にも興味ねぇし」
「やっぱり喜多川はそうだよねー……」
はい、玉砕!、と透は小さく項垂れる。
「どうせ俺も一緒に行くような友達居ないんだけど」
「まぁお前はそうだろーな」
「……意地悪なことなら、ホントいくらでも言ってくれるんだから」
ポツリと呟いて、透は缶の中身を飲み干すと、再び課題に向き直った。
喜多川とは初めてキスしたあの日以来、特に触れ合うこともなければ、一緒に出掛けたりしたこともない。
この先だって、そんな予定は何もない。
夏休みも、気付けばもう残りあと約半分。
あやふやな関係のまま、自分たちの夏は終わってしまうんだろうか。
◆◆◆◆
『今日、うち来い』
喜多川からそんな短いメールが届いたのは、課題を教わりに行った三日後のことだった。
これまで「そっち行ってもいい?」と聞くのはいつも透からだったので、喜多川の方から誘いを受けるのは初めてだった。
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