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眠いのに、わざわざメールを送ってくれたのかと思うと、嬉しさと愛おしさで胸がジンと熱くなる。
いつも言葉は足りないけれど、喜多川は透が思うよりずっと、透のことを考えてくれているのかも知れない。
話を振った透ですら、今日の花火大会のことなんてもうすっかり忘れてしまっていたのに、あの些細なやり取りを、しっかり覚えてくれているくらいには───
寝室のドアを開けっぱなしにしたまま、喜多川は既にベッドで寝入っている。開け放たれたドアも、もしかしたら喜多川の心の表れなんだろうか。
「……その内、ちゃんと一緒に眠れるかな」
そろりとベッドに歩み寄った透は、寝息を立てる喜多川のアッシュグレーの髪へ、起こさないようほんの微かに触れるだけのキスを贈った。
「凄い……! 十階からだと、こんなに綺麗に見えるんだ……!」
数分前から上がり始めた花火を眺めて、透は思わず感嘆の声を上げた。
片鱗しか見えない透の自宅と違って、喜多川の部屋のベランダからは、見事な光の輪が咲いていく様が遮るものもなく見える。
花火の音や鮮やかさに興奮したのは、何年ぶりだろう。
「……それより暑すぎだろ」
ベランダの手摺りに齧りついて花火に見入る透の隣で、少し前に起こされた喜多川が顰め面で呟いた。
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