番外編 ろくでなしの君と見るスターマイン

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 透だって、喜多川と親しくなることがなければ、この先もわざわざ花火を見たいなんて、きっと思わなかっただろう。たった一人で眺める花火は、とても儚くて寂しく見える。  ───でも、今はそうじゃない。 「……一瞬で消えるから、いいんじゃないのかな」  パッと咲いて、轟音を響かせては夜空に溶けていく花火を見ながら呟く。隣で、喜多川が続きを促すように視線を向けてきた。 「花火って、全く同じものは一つもないから。今、喜多川と見てるのと同じ花火は、もう二度と見られない。そう考えると凄く特別だなって思うし、だからこそ来年も、また次も……って、見たくなるんじゃないかなって」 「……お前は来年も高二かも知れねぇけどな」 「その冗談笑えないからやめて! ……もー、なんでそうやって水差すかな」  折角浸ってたのに、と口を尖らせる透の傍らで、不意に喜多川が身を屈めた。  薄らと汗の浮いた項に唇の感触を感じて、思わずビクッと肩が震える。 「なっ、なに……!?」  この前は何をされたのかもわからなかったけれど、さすがに二度目な上、汗を掻いていることもあって、驚いた顔で喜多川を見上げる。しばらくまともに触れ合ってもいなかったので、心臓がバクバク騒いでうるさい。  そんな透を、喜多川は涼しい顔で見下ろしながら言った。 「お前、相変わらずあのクソ野郎と実行委員やってんだろ」     
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