3846人が本棚に入れています
本棚に追加
実行委員なんて務まるのだろうかという不安はあったけれど、半年間だけの辛抱だと自分に言い聞かせて、透は腹を括った。
ところが、問題はそこからだった。
実行委員は、各クラスから二名ずつ選出しなければならない。決まったのは透一人。そして相変わらず、立候補者はゼロ。
透が仕方なく引き受けたところで、残るもう一人が決まらない限り、全員教室から解放して貰えないのだ。
誰も手を上げようとしない状況が五分ほど続いたところで、結局もう一人はくじ引きで決めることになった。それなら二人ともくじ引きにしてくれれば良かったじゃないか、とは、思っても口に出せなかった。
透以外のクラスメイトが順にくじを引いたが、ただ一人、引かない人物が居た。
喜多川亜貴。
透の右隣の席の彼は、五時限目が始まったあたりからずっと机に突っ伏して眠っている。明るいアッシュグレーに染められたミディアムショートの髪が、窓から吹き込んでくる風によって軽く乱されていた。
「おーい、喜多川。お前も引けよ」
最初のコメントを投稿しよう!