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それまで教室の隅で傍観していた担任の和田が声を掛けたが、喜多川は身動き一つしないまま、「……るせぇ」とだけ答えてひたすら無視を決め込む。やれやれとばかりに溜息を吐いた和田が仕方なく喜多川の代わりにくじを引き、全員が一斉に四つ折りにされた紙を開いた。
あちこちで、実行委員を免れた生徒が喜びの声を上げる中、和田が「あ……」と罰が悪そうな顔をした。
「……当たり、引いちまった」
ポリポリと項を掻きながら和田が掲げた『実行委員おめでとう』と書かれた紙を見て、透は「嘘だろ」と心の中で声を上げて青褪めた。
F高は、決してレベルの高い高校ではない。偏差値レベルで言えば、ギリギリ中の下といったところだ。その為、入学してくるのはβとΩばかり。
見た目では透は知性的に見られがちだが、それは恐らく眼鏡の所為だ。実際は、勉強はそう得意じゃない。授業は真面目に聞いているつもりだし、まったく勉強をしていないわけでもないのだが、一年の頃からテストは毎回平均点ギリギリだった。運動だって、小さい頃から小学生までスイミングスクールに通っていたお陰で水泳だけは人並みにこなせるものの、その他には得意だと言える競技は何一つない。
全てにおいて平凡。下手をすれば、それ以下。
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