第3話

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第3話

  ◆◆◆◆  週が明け、三度目の実行委員会が開かれる月曜日がやってきた。  今日こそ喜多川に逃げられるわけにはいかないと、透はHR終了を告げる日直の号令の間、ひとときも隣の席の喜多川から目を逸らさなかった。  以前は忍者のごとき素早さで逃げられてしまったので、一瞬でも目を離してしまったらアウトだと思ったからだ。  案の定、喜多川はそれまで爆睡していたのが嘘のように、「礼」の号令と同時にむくりと頭を擡げて、欠伸を漏らしながら荷物片手に席を立った。そのまま席を離れてしまう前に、透は素早く喜多川の正面に回り込んだ。 「き、喜多川! 今日、委員会の日だよ……!」  まだ半分眠そうな目が、何の事だよとでも言うようにジロっと透を見下ろしてくる。身長差がゆうにニ十センチはあるので、喜多川に睨まれた透は、狼に睨まれたチワワ状態だ。思わず息を呑んでしまう威圧感に、本能的に後ずさってしまいそうになる。  また「お前誰?」と言われることも覚悟していたが、必死に見詰め返す透の顔を見て、喜多川は呆れたような息を吐いた。 「しつけぇな。またお前かよ、眼鏡」 「め……眼鏡じゃなくて、一ノ瀬、なんだけど。一ノ瀬透」 「あぁ?」     
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