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第4話
◆◆◆◆
いよいよ、体育祭を丁度一週間後に控えた金曜日。
昼休みに入って十五分が経過したが、隣の席の喜多川は、三時限目に登校してきてから一度も起きることなく眠っている。これまではそんな喜多川をどうやって起こそうかと必死になっていたけれど、今は彼が眠ってくれていることに、ホッとしている自分が居る。
それもこれも、喜多川が初めて委員会に参加してくれた日に、気まずい別れ方をしてしまったからだ。
喜多川の寝姿から目を逸らした透の耳に、不意に複数の甲高い笑い声が聞こえてきた。つられるように顔を上げると、教室の扉口から三人組の女子生徒が入ってきたところだった。彼女たちは喜多川の姿を見つけるなり、嬉しそうに彼の席を取り囲んだ。
三人とも、透は初めて見る顔ぶれだった。ただ全員、明るい髪色にピアス、そして高校生にしては濃い目のメイクと、やはり派手な見た目の女子ばかりだ。
「ねぇ、アキ~」
一体いくつ穴が開いているのだろうと思うくらい、左右の耳をピアスだらけにした女子が、甘えた声と共に喜多川の身体を揺する。揺すられた喜多川は微動だにしないけれど、彼女たちは気にせず口々に声をかける。
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