第5話

1/10
3833人が本棚に入れています
本棚に追加
/239ページ

第5話

  ◆◆◆◆  体育祭を終え、土日を挟んで迎えた月曜日。  今日から六月に入り、制服も夏服に衣替えになった。  梅雨入りにはまだ早いものの、体育祭当日の晴天とはうって変わって、この日は朝からどんよりとした曇り空が広がっている。陽射しがないからか、半袖シャツでは今日は少し肌寒い。カーディガンを羽織ってこなかったことを後悔した。  曇天の下、透は駅から学校までの道のりを、重い足取りで歩いていた。気分も天気同様、暗雲が垂れ込めたようにずっしりと重たい。もっとも、透の気分が晴れないのは金曜からずっとだ。  体育祭の後、駅前で見かけた喜多川と橋口いずみの姿が頭から離れない。  ショックだったのは、喜多川が女性と一緒だったことでも、その相手が女優の橋口いずみだったことでもない。体育祭に来て欲しいという透の訴えをあっさり反故にされたのだということが、透の心を大きく凹ませた。     
/239ページ

最初のコメントを投稿しよう!