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次に永住が姿を現したのは関ヶ原の戦い後、三成が徳川家康(トクガワイエヤス)に敗れて数人の部下と逃走している最中だった。
「殿、ここで少し休みましょう」
部下にそう言われ、イビツな岩に腰掛けて休もうとしたその時、木陰から人影が見えたと思った瞬間、部下全員が一瞬で斬り殺された。
岩にしがみついて隠れる三成に、現れた人影が声を掛ける。
「久しぶりだな、三成」
聞き覚えのある声に反応して、三成は恐る恐る視線を向けた。
「・・・そんな馬鹿な・・・」
三成は自分の目を疑った。何故ならば、10年の歳月が流れているのにも関わらず、永住が当時の若いままの姿で現れたからだ。
しかし、着物から見える無数の刀傷と、右目上部にある大きな傷、そして秀吉から気に入られた端正な顔立ちから間違いなく永住だと判別できた。
「小綺麗だったお前が、今日は随分と薄汚れてるじゃないか」
泥だらけの姿で逃走を続けていた三成に、永住は笑みを浮かべながら声を。
その仕草や声に、三成は改めて目の前にいる男が永住本人だと確信する。
「永住、やはり生きていたか。それで今は、私の首を取りに来たのか?」
「いや、違う」
「なら、こんな山奥まで何しに来た?」
永住は腰に掛けていた袋を、三成の足下へ投げた。
「お前に土産を渡そうと思い、追ってきたんだ。開けてみろ」
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