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太宰は納得したように何度も頷く。
「そう言うこと。ま、宜しくお願いしますよ、先生」
とオーナーはハッハッハッと豪快に笑った。
「こちらこそ」
太宰はぺこりと頭を下げた。
「改めて、宜しくです」
と真帆。
「宜しくお願いしますね。お店は益々楽しくなるわ。それはそうと、幽霊さんには何の報酬を支払えば良いのかしら? 別に何かお仕事をして頂く訳ではないのだけれど、あの太宰先生がうちに居てくださるのに、まさかただで、とか申し訳ないし」
と華乃子。言われてみれば尤もな疑問点だ。
『いえいえ、お気遣いなく。私は私でやるべきことがあって居させて頂くのですし。反対にこちらがお礼として客寄せに貢献させて頂けたらと』
太宰は妖艶に微笑んだ。
……まさか、好みのお客様をこっそり口説こうとなんかしてないよねぇ。必ずしも先生の姿がその人に視えるかどうかもわからない訳だし……
ぼんやりと真帆は思う。
「おう、これは有り難い! 何はともあれ、『フォーチュン喫茶「本源郷」』の従業員の一人に仲間入りだ!」
オーナーは本当に嬉しそうに破顔した。
「大歓迎ですよ。宜しくお願いしますね」
と華乃子。彼女も本当に嬉しそうに目を輝かせている。
「改めまして、太宰治先生、ようこそ! 『フォーチュン喫茶「本源郷」』へ!」
真帆は丁寧に頭を下げ、キラキラ瞳を輝かせた。
かくして太宰治(の幽霊)は、『フォーチュン喫茶「本源郷」』の一員となったのである。
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