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「お待たせしました」
そう言って穏やかな笑みを浮かべて入って来たのは、色白でややふっくら柔らかそうな感じの大人の女性だった。黒目勝ちの大きな目は目尻が下がり、ふっくらとした艶やかな唇は紅色で、右側の上唇側の端に少し目立つ黒子がある。それがまた妙に似合い、親しみや易い印象を与えていた。少し波打った髪は、低い位置でシニヨンにして後ろで一まとめににている。べっ甲細工の楕円形のバレッタで纏めてあり、栗色の髪色によ映えていた。全体的に見て、まるでマショマロみたいに可愛らしい女性だ。
先ほど案内してくれた女性とは色違いの、ワインカラーの衣装を身に着けている。
「初めまして。富永華乃子と申します。この度はご来店有難うございます。ご予約頂きました鈴本優香さんですね」
彼女は向かい側に腰を下ろすと、手にしていた名刺入れから名刺を取り出し両手で手渡した。どうやら主に、その人に合った本を選ぶ本セレクト&表紙とオリジナル本の作成の担当らしい。
「はい、趣味で小説を書いてまして。小説投稿サイトを利用しているのですが。執筆歴とか受賞経験は一切問わない、と伺いまして。それで……あの。事前に言われた通り一応、誤字脱字をはじめとした編集は致しまして」
鈴本はそう言って、傍らに置いてあったA4サイズのファイル入れから、活字を印刷したコピー用紙を手渡した。華乃子は丁寧に両手でそれを受け取る。
「ええ、当店は世界でたった一つしかないオリジナルの本を作成しております。ただ、編集や校正は責任もってご本人にして頂きますが」
そして笑顔で説明を始めた。
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