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「当店では、占いやハンドマッサージなどの癒しのメニューの他に、そのお客様のお悩みに合わせて本をお選びしています。ええ、世界でたった一つしかない本です。扱いは当店にしかございません。そこで、当店では想いを込めて小説を書いている方の作品を、一冊の本にしています。アマチュア、趣味で書いている方大歓迎です。本にする基準はただ一つ。情熱を持って伝えたい事が読み手に響くか? これだけです。お見積もりは応相談。超短編一冊1111縁より承っております。ええ、円ではなく御縁の縁を使用しております。……鈴本様が今回お持ち頂いた小説は、短編ですね。かなり短いかな?」
華乃子はペラペラと用紙を捲る。こうして二人、個室で会話している間にも、少しずつ来客は増えてきたようだ。カランカランカランと入口の鐘の音で察することが出来る。
「はい、そうです。超短編で、二万文字程度です」
やや緊張した面持ちで鈴本は答えた。
「どのような事を、伝えたいと思って書かれましたか?」
「はい、あの……私、ずっとNoが言えない性格で。それで必要以上に、それも無意識に色んな物を抱え込んで。それで仕事も自分で自分の首を絞めてきた、ていうか。それで、少し体を壊して。療養している時に気づいたんです。色々無理してきたな、断って嫌われる事を恐れてたんだ、て。それから、Noと言える練習をして。同じような経験をしてる人に、少しでも参考になれたらいいな、と」
華乃子はうんうん、と頷きながら耳を傾けている。とても話しやすい印象を受けた。
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