15人が本棚に入れています
本棚に追加
/67ページ
「さて貴月君、気分はどうかな?」
授業終わりのチャイムの直後、校庭を駆けてきた倉石すももが、日陰に寝転ぶ体操着の少年に問いかける。
「久しぶりに、ゆっくり空を眺められたよ」
そう言って立ち上がる彼の名は、貴月陽光。
貴月は炎天下の授業中、とある理由で気を失って、この校舎の影で休まされていた。
「そう、ならよかった。でも私、びっくり」
「どしたの、倉石さん?」
「まさか、組体操の練習中にあんな事故が起きるなんてね」
「うん、僕も全くの予想外だったよ。組体操って、あそこまで危険なものじゃない」
「それで貴月君、吹っ飛んでどうだった?」
「……僕が宙を舞ったのは一瞬だったけど、真下の様子は嫌なくらい鮮明に見えてたね。
崩れてく男子の七段ピラミッド。
その中から何故か現れる、本来いちゃいけない一人の女の子。
みんな、本当に焦った顔してたんだけど……」
七段ピラミッドを倒壊させ、貴月を吹き飛ばした張本人は、あろうことか、この倉石だった。
「えへへ、ごめんね。貴月君、退院したばっかりなのにね。でも、怪我してなくて良かったよ!」
最初のコメントを投稿しよう!