嫌な予感

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「さて貴月君、気分はどうかな?」 授業終わりのチャイムの直後、校庭を駆けてきた倉石(くらいし)すももが、日陰に寝転ぶ体操着の少年に問いかける。 「久しぶりに、ゆっくり空を眺められたよ」 そう言って立ち上がる彼の名は、貴月陽光(たかつきようこう)。 貴月は炎天下の授業中、とある理由で気を失って、この校舎の影で休まされていた。 「そう、ならよかった。でも私、びっくり」 「どしたの、倉石さん?」 「まさか、組体操の練習中にあんな事故が起きるなんてね」 「うん、僕も全くの予想外だったよ。組体操って、あそこまで危険なものじゃない」 「それで貴月君、()()()()()どうだった?」 「……僕が宙を舞ったのは一瞬だったけど、真下の様子は嫌なくらい鮮明に見えてたね。 崩れてく男子の七段ピラミッド。 その中から何故か現れる、本来いちゃいけない一人の女の子。 みんな、本当に焦った顔してたんだけど……」 七段ピラミッドを倒壊させ、貴月を吹き飛ばした張本人は、あろうことか、この倉石だった。 「えへへ、ごめんね。貴月君、退院したばっかりなのにね。でも、怪我してなくて良かったよ!」
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