1 季節と煙

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 クライアントは人間じゃない。生物でもない。神だ。やたらと陽気で、無鉄砲なことばかりやらせる、背の小さい童顔だった。  俺たちは死んだ。死んでここにきた。それからは、ずっとこの仕事をしている。    失敗したときは死ぬときだった。正直なところ、もう死に慣れている。それでも最近はそういうことも少ない。尺が長いから、いちいち死んでいられないのだった。 「働け、かすども」  へらへらしながら、神が入ってきた。 「お疲れっす」  後輩の一人が、首だけを動かしてそう言った。  赤羽という。二十代後半で死に、最近ここに来た男だった。鼻が高くて目は細い。両肩から手首まで、青緑色の刺青が入っていた。  言葉使いは悪いが、一緒に動いてみて馬鹿ではないと、瀬木根は思った。  お互いのことはあまりしらないようにしている。訳ありなのはあからさまだったし、自分自身、喋りたくなかった。  煙草を灰皿に押しつけて、瀬木根は無言で喫煙室を出た。赤羽もついてくる。 「ここからは、二人だな」  瀬木根が歩きながら言うと、そうですねと、赤羽は気の抜けた声で返してきた。    こちらが接続を切ると、向こうの時間は止まる。まるでゲームのようだった。しかし、死んだ人間なのだから、自分たちが死んだ世界に戻って仕事をするのが普通じゃないのか。     
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