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「いろいろなものがいる土地かぁ」
うっとりと、珊瑚は目を細めた。
「行きたいなぁ。そこなら、あのキラキラしたものたちが役に立つから、島に来たものらは置いていったんだろうな」
「見てはいないが、おそらくそうだろう。きっとそれは黄金や宝玉のたぐいに違いない」
「それがあれば、いいことがあるのか」
「食べ物や着るものや、屋敷を手に入れることができる。屋敷とは、住む家だ。あと、人を雇うことだってできる」
「ふうん」
よくわからないと、珊瑚の顔に書いてある。どう説明をすれば伝わるのかと、栴檀の魔羅法師は考えた。答えが出る前に、珊瑚が言う。
「まあ、いい。あれば役に立つものなら、舟に乗るだけ乗せて行こう。そうすると、栴檀を大きくしてしまったら、荷物を載せる場所が減るから困ってしまうな」
「珊瑚……お前、俺と島を出るのか。泉と離れてしまうんだぞ」
泉の精だと思ったから、珊瑚は自分を無条件に受け入れたのではないかと、栴檀の魔羅法師は身を乗り出した。島を出ても、またすぐ戻れると珊瑚は考えているのだろうか。
珊瑚は横目で泉を見ながら、寂しい笑みを口の端に浮かべた。
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