栴檀の魔羅法師と珊瑚鬼

15/22
前へ
/22ページ
次へ
 どんなに美しい姫の姿を見ても、どれほど麗しい同性を目にしても、これほどの情欲が湧き起こったことはなかった。魂の奥底から、珊瑚が欲しいと声がする。  野性味あふれる力強さと、しなやかさを思わせる彼の肢体。一見すると獰猛そうでありながら、よく見れば無防備で愛らしい顔立ち。疑うことを知らない、曇りのない眼。 (珊瑚は、誰の手にも汚されていない、美しい宝玉だ)  それを掌中に収めたいと、栴檀の魔羅法師は切望した。 「体の大きさが、おなじほどになればいいのか?」  気の毒そうに眉尻を下げた珊瑚に、そうだとうなずく。すると珊瑚は少し考える顔をしてから、そっと栴檀の魔羅法師を床に下ろした。 「少し待っていてくれ。ぜったいに、泉に溶けて消えないで待っていてくれ」 「わかった。待っている」  うれしそうに口許をほころばせて、珊瑚が洞窟を出て行った。いったいどこに向かったのか。気にはなったが、待っていろと言われたのでおとなしくその場に座って、洞窟内を見回した。 (ここでずっと、ひとりで過ごしていたのか)     
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

46人が本棚に入れています
本棚に追加