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どんなに美しい姫の姿を見ても、どれほど麗しい同性を目にしても、これほどの情欲が湧き起こったことはなかった。魂の奥底から、珊瑚が欲しいと声がする。
野性味あふれる力強さと、しなやかさを思わせる彼の肢体。一見すると獰猛そうでありながら、よく見れば無防備で愛らしい顔立ち。疑うことを知らない、曇りのない眼。
(珊瑚は、誰の手にも汚されていない、美しい宝玉だ)
それを掌中に収めたいと、栴檀の魔羅法師は切望した。
「体の大きさが、おなじほどになればいいのか?」
気の毒そうに眉尻を下げた珊瑚に、そうだとうなずく。すると珊瑚は少し考える顔をしてから、そっと栴檀の魔羅法師を床に下ろした。
「少し待っていてくれ。ぜったいに、泉に溶けて消えないで待っていてくれ」
「わかった。待っている」
うれしそうに口許をほころばせて、珊瑚が洞窟を出て行った。いったいどこに向かったのか。気にはなったが、待っていろと言われたのでおとなしくその場に座って、洞窟内を見回した。
(ここでずっと、ひとりで過ごしていたのか)
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