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「惚れる、ということが、どういうことなのかがわからない」
「だからだ。だから、島の外に出て、共に暮らして、その中でいろいろのことを知って、惚れる、を、覚えて……その対象が俺だったときに、珊瑚のすべてを俺にくれ」
必ず惚れさせてみせるぞと、決意を瞳に浮かべて、栴檀は珊瑚を見つめた。珊瑚はもの言いたげにしながらも、わかったとうなずいた。
「それなら、そういうことにしておこう。俺は栴檀と島を出て、いろいろを覚えて、それで栴檀に惚れたら俺を与える」
「決まりだな」
「それじゃあ、小槌のほかのものも持ってこよう。俺はどれが何かを知らないから、栴檀が持って出るものを決めてくれ。裏に、栴檀の舟よりも大きな船があるんだ。栴檀の舟を使って、ちょっとある穴をふさいで出ることにしよう」
言うやいなや、珊瑚は洞窟を飛び出てしまった。引き締まった背中や尻のエクボを見送って、栴檀は頬を持ち上げた。
「あの腰をしっかりと抱きしめて、俺を深く突き立てられるよう、お前に惚れられるために、俺は全力を尽くそう。珊瑚」
彼のつぶやきは、風に乗って、それと気づかせずに珊瑚の胸をときめかせた。
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