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チワワはコワい
犬がほえていた。
あれは去年の…いつだったっけ?
そろそろはだ寒くなり始めたころだから、9月だったかな?
そんなに前のことじゃないのに、今の今までさっぱりポンって忘れてた。
とつぜん目の前にあらわれた犬がいきなりほえ出した。
と思ったら、りょうこさんがおこりだした。
「ちょっと! ワ、ワンちゃん、リード長くしすぎじゃないんですか?!」
と言いつつりょうこさんは私の前に立って、飼い主のおばさんにもんくを言った。
おばさんはとまどっているみたいだった。
で、何だかちょっとニガ笑いもしてるみたいだった。
でも、確かにそのおばさんがにぎっているリードは、よく町で見かける犬の散歩で飼い主さんが持っているものよりも長めにのばしてあった。
だって、そのおばさんは私たちから3メートルか4メートルほどもはなれているのに、犬は私たちのすぐ目の前にいるんだもの。
ただでさえ長めにしてある上に、そのリードはゴムか何かでできているようで、犬が歩きまわるたびにびょーんってのびたり縮んだりしている。
私はりょうこさんの後ろからそおっと顔を出し、りょうこさんの顔を見上げた。
額にあせをたらたら流してて、何だか必死って感じの表情だった。
「はいはい、ごめいわくさま」
おばさんはあっさりと言うと、その子犬をひょいっとだっこするとすたすたと去っていった。
そう、まだ子犬。しかもチワワ。
だっこされてるチワワはひょろっとしたその小さな顔を私たちの方に向けて、まだきゃんきゃんと鳴いている。
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