0人が本棚に入れています
本棚に追加
りょうこさん、あんな小さなチワワなのに、どうしてこんなにムキになっておこったんだろ?
「ちょっと、いい?」
と言うと、りょうこさんは私の手をギュッとにぎって歩き出した。
「え? あ、あの…」
私と手をつないだまま一目散にスタスタと歩いてゆく。
つないだその手はあせでしめっていた。
その横顔を見ると、何だかまだおこっているみたいで、まゆをきゅっとつり上げてけわしい表情をしていた。
少し歩くと、そこはいちごちゃんと良く学校の帰りにおしゃべりをする公園だった。
りょうこさんは私を引っぱって公園に入っていくと私の手をはなし、公園の真ん中にある水飲みに直行した。
おもむろにじゃぐちをひねると、水が勢いよくぴゅーって飛び出して、かがんだりょうこさんの顔にひっかかった。
「あー、もう!」
りょうこさんはハンカチを取り出すとぬれた顔をふいて、改めて水を飲んだ。
ごくん、ごくんと、飲んでいる音が私のところまで聞こえてきそうだった。
ひとしきり飲んだら「はあー」とため息をついて、片手にハンカチを持っているのに使わず、もう片方の手のこうで口をぬぐった。
私はぽかーんと口をあけて見てた。
モデルさんみたいにキレイで、いつも落ち着いていて、歩き方や何かをするしぐさがとってもゆうがなのに、今日はイメージがちょっとちがう。
りょうこさんはハンカチを持っている事をやっと思い出したみたいに、口をぬぐってぬれちゃった手をハンカチでふいた。
「私ね、犬、ダメなの」
りょうこさんはハンカチをバッグにしまいながら言った。
最初のコメントを投稿しよう!