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「だから、草吾さんもそのつもりでいてください。普通に話しかけて、昨日の続きの話をしてください――絶対に、思い出してみせますから!」
半ば叫びに近い断言に、草吾が呆気に取られている。この顔を、ナオは初めて見た。間違いなく、初めてだった。
しばらくそうして固まって……やがて、ゆっくりと唇の端が持ち上がった。
「……面白い、な」
どことなく、意地が悪そうに聞こえるのは……気のせいではない。まるでおもちゃを見つけたような、子供っぽい顔で、草吾が笑っていた。
「いいのか? 結構しんどいと思うぞ。あと、一応言っとくけど忘れてやれないし。俺は俺の選んだ道だけ――」
「何言ってんですかっ」
ふん、とナオはセリフを途中で遮った。まだ分かってもらえないのが腹立たしい。
「私だって、私が選びたい道ですよ!」
辛かろうが、痛かろうが。記憶を沈めるより、忘却に苦しむより、思い出して、共にまた笑い合える未来がいい。
「私は私の覚悟を見つけて、いつかあなたに追いついて――追い越してみせます!」
強くないと言った背中に庇われたのなら、次はその隣に立つようになりたかった。
今はそれが、ナオの「覚悟」だ。
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