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明かりを点けてもリビングはそれほど被害は無かったようだ。
しかし、キッチンは違った。
電子レンジが落下し、冷蔵庫がシンクに支えられている。だらしなく扉が半開きなって、冷凍室の引き出しは床で塞がれていたが、少しだけ口を開けていた。
電気ポットも皿も見事に棚から落ちて、ガラスや陶器の破片が散らばっていた。
なんとなく地震が起きた事は分かっていたが、やはり自らが経験するとは思っていなかったのだ。
慌ててリビングに戻り、テレビを点けた。
「午前3時8分ごろ、震度6強を安平町そして震度6弱を千歳市が観測しました」
──震度6強……?
テレビを見ながらその震度を確認するが、その数字に全く実感がなかった。
そしてその直後、どこかで携帯が身を揺らし始めた。
寝室に置いたままの携帯を探すと、緋浦からの電話だった。
通話にすると、緋浦が泣きそうな声を上げて訴えてくる。
『あやちゃーん!怖かったよー!そっちはどうなの?そっちの方がひどいんでしょ?っていうか、停電怖いんだけどー!』
いつものキャラじゃない甘えたような声で捲し立ててくる。
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