ブラックアウト

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「緋浦先生、今どこにいるんですか?」 『今?今、出張で砂川に来てるのさ』 「砂川は停電なんですか?」 『そう。だから状況が確認できなくて』 「こっちは電気点いてます……」 最後まで言い終わる前に、プツリと、テレビと家の電気が消えた。 「ああ…たった今消えましたね」 『え?何その時差』 その声で緋浦が顔をしかめている様子が想像できる。 「ちょっとライト探します」 『え…ちょっと待って。じゃあ電話切るから。ケガしないようにね?』 緋浦はそう言って気遣ってくれて、お互いに励まし合いながら電話を切った。 携帯のライトをつけて、寝室へと向かった。仕事用のバッグの中をまさぐって、通勤時に万が一必要になった時のために持ち歩いているライトを探した。 見つけたライトを点けてもたいした明かりではない。医者が胸ポケットに入れておくようなペンライトだ。 それをリビングへ持っていき、天井からつるされている照明の紐に括りつけると、薄い光が室内を何となく照らしてくれる。
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